一人でも多く眼が見えなくて不自由をしているお年寄りを減らしたい。
私が高校生の時、祖母が白内障手術を受けました。当時は白内障になった水晶体をすべて取り除き、術後には瓶底メガネと言われるような度の強いメガネをかけて過ごしていたのを記憶しています。
手術をしてから、メガネなしでは何もできない状態になってしまった祖母に対してずいぶん不便そうだなと思った記憶があります。その頃自分がまさか眼科医にになって白内障の手術をする立場になるとは思っていなかったので、手術がどのような内容で行われたかに関しては全く無関心でした。
今や白内障手術を受けられる患者様は年間100万人を超えるようになり、技術の工夫や機器の改良が相乗効果を生む形でより身近な手術の部類になっています。
「祖母が今も生きていたら、こうしてあげられたのにな」そんな想いが私の眼科医としての原点です。
人生100年時代と謳われるように、長寿化がすすみ否が応でも眼の不調に出くわす人々が増えています。
白内障はもちろん、緑内障に黄斑変性症どれも長生きしたからこその患いです。その中にあって、緑内障や黄斑変性症は治療を行っても元通りの見え方に戻すことはなかなか難しい病気ですが白内障は手術を行うことによってほとんどの方が患いから解放される稀な疾患です。
白内障による視力の低下は、日々僅かなため視力低下にすら順応してしまってはたして自分が見えているのかいないかのはっきり自覚しにくくなってしまうこともしばしばです。自分では見えているつもりのお年寄りも、ご家族に連れてこられて白内障がとんでもなく進んでいる例は数えきれません。
「こんなに長生きするとは思っていなかった。」そうおっしゃるお年寄りに対して「まだ見えるようになる希望がありますよ。」とお伝えした時の期待に溢れた表情に接するたびに「一人でも多く眼が見えなくて不自由をしているお年寄りを減らしたい。」との想いが募ります。
人生100年を謳歌するために
およそ800万人超とも言われるいわゆる団塊の世代の方々が白内障の症状を自覚する時代になりました。
「まだまだ現役を続けていきたいしかし老眼が進んでものが見えにくい」「旅行やスポーツを楽しみたいけど老眼鏡があるとうっとうしい」「近視に白内障の症状が加わってメガネでは満足いく視力を出せない」と言ったこの世代特有の悩みが生まれています。
そうしたニーズに応えるべく白内障手術はいまや「水晶体再建術」と名称を変え、単に濁った水晶体を除去するだけの手術の域をこえて、単焦点眼内レンズ、単焦点+乱視矯正レンズ、遠近両用眼内レンズ、遠近両用+乱視矯正レンズなど皆様のライフスタイルに合った手術を施行することが可能になっています。
正直言って自分の水晶体に勝る機能は無いかもしれませんが、徐々に機能を低下していく水晶体に十分変わる機能は有していると自負しています。
「年齢に関係なく、見えにくさで皆様の人生の質を落として欲しくない」それが私の信念です。